CONCEPT

ラブストーリーから生まれたキッチン雑貨のブランド
クイジーヌ・ハビッツ。

キッチンに立つことを習慣にしてほしい…
そんな思いで名づけました。
簡単においしくおしゃれなものを作って
彼の胃袋をつかもう。
そう、おしゃれを楽しむように、
恋するように食事を楽しもう。

愛情のこもった料理には、
愛着がもてる道具があるとなおいい。
そんなお気に入りの道具や食器を
友達や家族にも贈って、
料理がつなぐ幸せを広げられたらすてき。

STORY
Epilogue

ニューヨークのリトルイタリーにあるKITCHENWARE SHOP「CUiSiNE HABiTS」は、近所のDELIで働くフランス人シェフ ジェーンお気に入りのお店。そんなCUiSiNE HABiTSのオーナー ウィルは、5歳になる息子 マーカスを男手ひとつで育てている。
ジェーンとウィル、そしてマーカス。“食”をきっかけにした3人のストーリーが始まりそうな予感…

Episode.1 PARIS

PARISのCUISINEで働くジェーンは30歳。
同僚で恋人のセルジュとはもう5年近く一緒に住んでいる。結婚はしていない。
同じ厨房、同じベッド。意見の違いがあったら仕事でもプライベートでもワインを傾けながらとことん話し合う、そんな二人だった。

出会った頃の新鮮さは失われていったものの、二人の間には信頼と、一緒に働く、そして一緒に生活する者同士の思いやりや安心感といった家族に似た感情が育っていた。少なくともジェーンはそう信じて疑わなかった。

一年ほど前だっただろうか、二人が働く店にウェイトレスのキャロルが現れる。
25歳、ジェーンがセルジュと一緒にいはじめた頃だ。
CUISINEのみんながキャロルとジェーンが姉妹のように似ていると言った。今となっては皮肉なことに。

それ以前にはこんな日がくることなど、全く想像していなかった。ジェーンはセルジュに別れを告げられたのだ。キャロルと結婚したいのだと言う。
びっくりするやら、呆れるやら… でも、キャロルはいい子だとジェーン自身も知っている。彼女のほうが素直でかわいいから、気の弱いセルジュにはあっているのかも知れない。悲しい気持ちと不思議を平行して、ジェーンはそんなことを考えていた。

とにかく終わったのだ。
もう彼はいない。そしてもちろん職場にも居づらい、というか居られない。

Episode.2 NY

仕事に行く気もしないで一週間ボーっとしていた。
ジェーンは10代のころ何度か長期の休みを使って、NYに英語を学ぶため留学をしたことがあった。今でも、いい思い出になっている。パリよりも都会的で、人々が干渉し合わないドライな関係に少し憧れる。
誰も知っている人のいない場所に行きたい。ぼんやり考えていた。

これまでにこんな経験はない。仕事は好きだし、人に会うのも好きなのにもう一週間、誰とも話すらしていない。友達や同僚からのメールや電話も無視した。きっとセルジュがフォローしてくれるだろう、そんな甘えもあって。それにしても何もしないというのも想像以上に大変で、そろそろ飽きてきていた。

やっぱり行こうか、NY。
手に職はあるのだし、少しだけども貯金もある。結婚資金もいらなくなった。
素敵な出会いもあるかもしれない。
心機一転、全てを捨てて生まれ変わった気分で大好きな街で暮らそう!
決めてからは全てが思うより早かった。

リトルイタリーに部屋を決めて、すぐ近所のDELIで仕事も始めた。老夫婦のハリーとエリカが二人で営むDELI。娘のようにかわいがってもらえた。朝の出勤前、ランチタイム、サパータイム…常連の多い店だった。

Episode.3 CUISINE HABITS

3ヶ月が経ち、ニューヨークでの生活にも慣れた。職場と家の往復が主な生活だったけど、そんななかジェーンは楽しみを見つけた。近所に食材とキッチン用品を売っているお気に入りの店を見つけたこと。
“CUISINE HABITS”。その響きはジェーンにとって懐かしくも切ない。

身軽に引越しを済ませたジェーンは、プロでありながらも自宅のキッチンには充分な道具を揃えていなかった。調理道具、食器やグラスなどもセルジュと料理をして食事したことを思い出すのも辛そうで、大半を処分してしまったのだ。
お気に入りをひとつひとつ揃えていく。それが楽しみになっていた。お店の人とも仲良くなった。ジェーンがお店に行くだけでなく、お店の人がDELIにランチを買いに来てくれるようにもなった。

DELIで働いていたから食べるものには困らなかったけど、仕事を離れて好きなものを作って食べるのがジェーンはやっぱり好きだった。

ある日、自信作を職場に持っていった。ハリーもエリカも、それはそれは喜んで食べてくれた。DELIのメニューに加えたいと言われ、ジェーンは張り切った。
そんなことを繰り返し、フレンチテイストがうけたのかジェーンの料理が近所で評判になりDELIは以前にもまして人気の店になった。

Episode.4 Father and Sun

その頃、ジェーンには気になる父子がいた。朝だったり、夜だったりしたけれど、ほぼ毎日二人はDELIを訪れた。そして毎回、その前に買って食べたものの感想を聞かせてくれる。お父さんからだったり、息子からだったりするのだけれど、その批評を聞くのがジェーンの日課に、そして楽しみになっていた。特に息子は母親に感想を述べるような調子でジェーンに甘えてくる。この人たちは毎日私のつくった物を食べている。

久しぶりに家族ができたかのようだった。
“食べる”という行為を通してだけの話だけれど。長年親しんだ街が嫌で、ドライな関係を求めてNYに来たはずのジェーンだったが、やはり人間の本質なんてそれほど簡単に変わるものではない。自分の作った料理を喜んで食べてくれる人を、いつのまにか求めている。
干渉しあうことは本来嫌いじゃない。そう気付くと少し淋しくなった。

淋しさをあおるかのように、ニューヨークで初めて迎える誕生日が来た。31歳、微妙な年頃…ひとりで何をしよう。さすがに仕事が終わっても今日はまっすぐ家に帰る気分にはなれそうにない。老夫婦の自宅に招待されたが気乗りしなくて断った。申し訳ないとも思ったがいい年した女がそこに甘えてはいけない気がした。

閉店の準備をしていたら例の父子が滑り込みで入ってきた。花束を持って。
今日はDELIではなく、僕の手料理を食べてください。父がそういうのにあわせて息子がぺこっと頭を下げた。何が起こっているのかよく分からないというのに、ジェーンは自分が笑みを浮かべていることだけは気づいていた。

Episode.5 Necessary

DELIからものの3分しか離れていないところに彼らは住んでいた。きれいに片付けていた部屋、テーブルには料理がスタンバイされていて、おいしそうな匂いが立ち込めていた。

シャンパンがあけられ、ふたりがジェーンの誕生日を祝ってくれる。この子があなたの料理を気に入ったおかげで、僕はこのところあまり料理の腕を振るってなかったんです。でも、今日はあなたの誕生日だからがんばりました。うち、道具はそこそこ揃っているんですよ。そう言われてキッチンに目をやると見覚えのある道具がズラリとある。

ジェーンが気に入った店のものだ。“CUISINE HABITS!”あのお店、私も大好きでよく行きます。共通点が見つかったことが嬉しくて、すっかりはしゃいでいるジェーンにありがとう!と彼。実は僕のお店なんです。家内がなくなるまでは彼女が店を切り盛りしていました。僕はお店に立つのは照れくさいから人に任せっきりですけど。マーカスの世話があるし。ウィルはジェーンお気に入りの店“CUISINE HABITS”のオーナーだった。

不思議な縁だとジェーンは思った。この人達に出会うために私はNYに来たのかもしれない、とすら思った。気分はすでに“めぐり逢えたら”のメグライアン。ウィルがトム・ハンクスに思えてくる。つくづくNYって映画の似合う街である。PARISももちろん素敵だけれど…ラブコメに弱いジェーンはそんなことを思った。

ジェーンがNYに来て1年が経った。PARISにはクリスマス時期に実家に1度帰ったきり。会いたい友達がいない訳ではないけれど、メールで近況を知らせる程度でいいように思っていた。
セルジュはキャロルとの間に子どもができて、結婚しそうだ。もうどちらでも構わないことのようにも思えたし、そうでもないようにも思う。

NYでの生活は快適だった。ジェーンが働くDELIでは毎朝、老夫婦が自分の出勤を心待ちにしてくれたし、常連客とも仲良くなり、休みの日に一緒に食事に行くような友達もできた。思い切ってNYに来てよかった、今はそう思える。

NYで迎えたはじめての誕生日をお祝いしてくれた父&息子は、相変わらず毎日のようにDELIに顔を出し、前の日に食べたものの感想を聞かせてくれる。そんな穏やかな日常をジェーンは気に入っていた。PARISのレストランで慌ただしく働き、家に帰ってまで恋人と仕事について語り合う、あの頃の生活が今ではもう自分ではない、誰か別の人のことのように感じられた。

Episode.6 San Francisco

そんなある日、ジェーンはいつも通り出勤をすると開店前の店の前に例の親子が立っているのを見つける。父ウィルがしゃがんで、息子ルーカスの肩を抱き何か言い聞かせている様子。いつもおりこうさんなルーカスが泣きじゃくっている。駆け寄るとルーカスが振りかえりジェーンに抱きついてきた。

「おじいちゃんのところに行きたくない。遠足に行くの!ぼく前から楽しみにしてたのに。ジェーンの作ったお弁当持って行くの楽しみにしてたのに。」とさらに泣きながらうったえる。
確かに明日はルーカスの遠足だからと、お弁当作りを頼まれていた。ランチボックスを2、3日前に預かりどんなお弁当にしようかとジェーンも楽しんで構想をねってはいた。

「実は父が倒れてしまって、今からサンフランシスコに行かなきゃならないんです。当然ルーカスも一緒に、と思っているのですが遠足に行けなくなることに気づいてしまって、言うことを聞かなくなって。こちらに伺っても仕方ないのですが…」ルーカスに引っ張られるようにここに来てしまったのだという。

「おじいちゃんに会いにいかなくていいの?」ジェーンがたずねると大きくうなづく。
「2歳の時に会って以来なんで、記憶にないみたいで…その気持ちも分からなくもなくって。」ウィルもすっかり困り切った表情だ。

「預かりましょうか?」そうすれば明日の遠足にも行けるし、自分のお弁当の構想も実現できる。お母様が動揺してるから行かなきゃというレベルで、お父様の状況もそう深刻な様子ではないようだった。5歳の男の子には遠足の方が大事で当然かもしれない。

恐縮しながら、ウィルはルーカスをジェーンに預けてサンフランシスコへ旅立っていった。ルーカスはすっかりいつものおりこうさんに戻り、一旦家に帰り、仕度をして幼稚園にジェーンが送り届けた。DELIの夫婦へ事情を説明し早退させてもらった。ルーカスを迎えに行き、ふたりで買い物をしてウィルとルーカスの家に行き食事の仕度をする。誕生日を祝ってもらってから、何度か食事に招かれた家ではあったけれど、自分でキッチンに立つと雰囲気は違うものだ。ましてやルーカスと二人きりなのだし。

Episode.7 Jane and Lucas

ジェーンが食事の仕度をする間、ルーカスはテレビを観たり、お絵かきをしたり、幼稚園で今日あったことを話したり、楽しそうに食事の時間を待っている。こどものいる生活ってこんな感じか…なんの心構えもなく、急に母親気分を味わっていることが、そして以外にも自然にふるまっている自分が不思議だった。ルーカスは機嫌よく食事をした。

お風呂に入って、明日の遠足に着ていく服を決めて…お絵描きに付き合って、絵本を読んで寝かしつけた。子どもがいるってやることがいっぱいあるものなんだなぁと考えながら、ひとりなんとなく絵を描いていた。ルーカスの描いたなんなのかわからないけれど、かわいらしい絵を横目で見ながら…

翌朝、ジェーンは計画通りにお弁当を作り、ルーカスは喜んで遠足へ出かけて行った。午後、DELIで仕事をしているとウィルが現れた。「昨日は本当に助かりました。幼稚園へのお迎えは、僕が行くんで大丈夫です。」慌ただしく店を後にした。もう一晩ぐらいルーカスと過ごしたかったような気がした。

夕方ウィルがルーカスとお弁当のお礼にやってきた。周りのお友達にも分けてあげて、とても好評だったと鼻高々に話をする。「今日はジェーンは家には来ないの?」子どもは正直だ。来ればいいのにのニュアンスをたっぷりにそう言う。「よろしければいかがですか?今日は僕が料理をしますから。お話したいこともあるし…」迷っていると「では、20時お待ちしてます。」と押し切られてしまった。話ってなんだろう、少し期待しないでもなかった。

Episode.8 Jane and Will

ジェーンが訪ねると、玄関に昨日ルーカスと描いた絵が飾ってあった。「気に入っちゃって。飾ってた絵に少し飽きてたからちょうどいいかなって。二人の合作だって聞いて。」なんなのかわからないけど可愛らしい絵は額に収まるとその表情を変え、アートになっていた。食事を済ませるとなごりおしそうにしながら、ルーカスは寝かしつけられるべく自分の部屋へと向かっていった。そういえば話ってなんだったんだろう?リビングで紅茶を飲みながら思い出してドキドキしていた。

ウィルは戻ってくると、サンフランシスコの町について話した。NYよりもコンパクトで少し田舎なところがいいと言った。素敵な店を見て刺激を受けたことなんかも。いずれは自分が営む“CUISINE HABITS”も調理道具だけでなく、衣・食・住すべて提案、提供できるお店にしたいと話した。「あなたが料理上手なのはわかってます。でもそれだけじゃなく、洋服のセンスもいいし、絵を描かせても独自のスタイルがある。あなたのセンスを生かして、商品を作ったり選んだりしてみませんか?僕には女の人のBAGや靴はよく分からないから。」

告白でもされるのでは?と思っていたことがはずかしくなった。でも、たくさん褒められていい気分。美にはうるさい国フランスに育ち、NYに来た私にだからこそできることがあるかも知れない。気が付くとジェーンは即答していた。

「わたしやってみたいです。」
3ヶ月ほど経って、“CUISINE HABITS”に新しいコーナーができました。

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